文字の洪水に溺れながら

人生初心者、でも人生のハードモードぐらいを生き抜きたい人間。

四年前の自分に捧げるメッセージ ― 「楽しさ」について編 ―

四年間の大学生活がもうすぐ終わる

四年間の幸せと四年間の苦しみを経験した自分から、
四年前の自分に率直なメッセージとアドバイスを贈ろうと思う。


これから君は沢山の時間をかけて沢山の経験をする。
それは辛いことも多いし、楽しいことも多い。
すべての時間を思い出せるわけではないけれども、
人並みの学びを行い、人並みの感情を経験し、
今の僕は人並みの人になったと自負できる。


いや、君にとって残酷な言い方をするならば、
人並みの人にしかなれなかったと
表現したほうがいいかもしれないね。


君はこれを聞いて失望するだろうか。
それともやはりと納得するだろうか。
どちらになるかはわからないが、
この文章を読んで全く変わらない人生を送るほど
君は馬鹿ではないと信じてこのメッセージを書き残そう。

楽しさには二種類ある


まずは「楽しさ」について話そう。


これからの大学生活で君が感じることになる
楽しみには大きく2つに分けられる。


1つは享楽で、1つは獲得楽だ。

享楽について


享楽は思考停止に近く、
不思議に思うかもしれないが、
それは君を思った以上に幸福へと導く。
だから別にこれを嫌悪する必要はない。


もう知っているとは思うけれども、
君は根の部分では怠惰にできているから、
時と場合によってはこういう楽しみを享受する事は必要だ。
実際、この楽しみに救われたことは少なくはなかった。
ただ、それが刹那的な楽しみだと忘れてはいけない。
そして、それは外から与えられる楽しみだと忘れてはいけないよ。


享楽は往々にして消費という形を取ることが多かった。
この消費という言葉には、時間とかお金とかいう意味もあるけれど、
用意されたコンテンツを想定された範囲内で利用する
そんな表現の方が実感としては近い意味だろう。


享楽は享受する楽だから、だいたい作成者がいる。


作成者の想定した箱庭は、
自らの費やした時間にあった成果をくれるし、
与えた時間に対してそれなりの満足感を与えてくれる。
ただ、それは箱庭の中でしか使うことができない。
僕は現実に戻ってきたときにその事実に何度も直面した。
消費はとても楽しいけれど、とても虚しいものだ。


この四年間、僕は刹那的な喜びを得るために、
大量の時間を浪費してきたことを君に明かそう。
そしてそれを無くすことが恐らく不可能なことも予想しよう。


だからこそ、君には享楽との付き合い方を確立して欲しい。


享楽に使われるのではなく、
享楽を使えるような人間になってほしい。

獲得楽について


さて、次は獲得楽だ。


想像が付くと思うけれど、
これは人から与えられるのではない
自分から獲得することによって得られる楽しみだ。
言い換えると、自分を自分で認めることによって得られる楽しみだ。


ただ残念ながらこいつはすぐに得ることができない。
しかも、経験上、楽して得れることも少ない。
こいつは、なんかもうどうしようもない所から、
自分なりに必死になった先に得られることが多かった。
言ってしまえば努力の先のほんの小さなご褒美みたいなものだ。
享楽と比べれば笑ってしまえるぐらいコスパが悪い。


でも実はそうじゃない。
これは刹那的な楽しみではない。
この楽しみこそが自分の価値を形作るものなんだ。


一度、経験したこの楽しみは、結構長いこと自分に残る。
自分を支えてくれる自信とかそういうものを与えてくれる。
大学で専門技能を極めるつもりのない君にとっては、
この獲得楽をどれだけ体験できるかが四年間の至上命題になる。


アイデンティティーってやつもだいたいココから来る。
なぜなら自分が自分自身のためだけに与える獲得楽ってやつは、
享楽と違って誰にもコピーされない自分だけのオリジナルだから。


アイデンティティーついでに言うと、
こっ恥ずかしいけど興味のあるだろう自分探しの旅は、
自分がやった結果そのものが自分の獲得楽として自らの答えになる。
だから外から与えられるものに本当の自分なんかあると思っちゃいけないよ。
本当の自分は、自分で認めて自分で作るしかないのだから。


さて、その獲得楽を手に入れる方法だけど、
自分に恥じない生活をするしかない。
面倒くさいけど評価者は自分しかいないから。


で、自分に恥じない生活ってやつは、
自分の駄目さとか限界とかに向き合って、
それを少しでも克服するように生活することだ。
それはとても苦しくて、とても面倒くさい。

でもやるしかない。


なぜかって?


君はそれをやらないと後悔する人間だって
僕が一番知っているからだ。


これからの四年間が君にとって価値のある四年間であることを祈っているよ。