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文字の洪水に溺れながら

人生初心者、でも人生のハードモードぐらいを生き抜きたい人間。

燃えよ剣(上)の読書感想 アンチ土方の立場から

燃えよ剣(上)

燃えよ剣〈上〉 (新潮文庫)
司馬 遼太郎
新潮社
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正直な話をして、私は土方を好きになれない。
上巻のみを読んだ感想は素直にこのようなものだ。

この本を読まずして漢を語るのははばかられる。
そう思って齢24になって読んでみたが、
少々読むのが遅すぎたのかもしれない。

ファンの方には「この腑抜けもの!」
と馬鹿にされるのかもしれないが、
土方の暴力的で自分勝手、
自己のあり方に自信を持ち、
それが守られなければ殺人までもを
犯していく彼の心は理解しがたかった。
いや、正確に言えば理解は出来るが、
理解したくなかったというのが本音のところだ。

おそらくこのような感情を持ってしまうのは、
死というものをフィクションの中でしか感じられない
平和な日本で育ってきたからだろう。
短絡的(と私は感じてしまう)に、
国学者を胡散臭い人間として死の懲罰を与えていく
彼の姿は、不快感すら感じてしまった。

また個人的には土方には思想というものを
軽視していたことに憤りを感じたのだとも思う。

私は行動によってのみ生きていく生き方が苦手だ。
何事も先に理と利を考えてからしか行動できない。
そんな生き方を少なくとも四半世紀続けてきた自分には、
信念を持って人生を道具として生きていく彼の姿には
理解不能の恐ろしさしか抱けなかったのだ。

上巻までは土方無双だったのも気に入らない点だったのかもしれない。
どうしても私は夢想している人物にその理由を求めすぎる癖がある。
上巻まででの土方の描写では私の中では、
その強さの理屈が説明されているにいたらなかったと感じてしまった。
もっともこれもまた、単なる理屈の話でしかない。

下巻に入り彼の人間的魅力を再発見できるかどうかが、
この本を感情的に好きか嫌いかを分けるだろう。

彼の常軌を逸した自己の信念の強さの信奉といった
おそらく評価すべき点を全て無視した感情論を書いてしまった。
改めてファンの方には謝罪をしておく。

話は飛ぶ。

ここまで書いてきて、
なぜ、土方をここまで毛嫌いしながらも、
今までに読んできた似たような行為の人物は
私は肯定できていたのだろうか?

例えば桶狭間戦記で松平広忠を見殺しにした今川義元
例えば北方三国志曹操やFateZeroの切嗣
そんな彼らは自己の信じる信念のもとに、
数々の障害者を断罪し、殺害してきた。

いったい土方に感じているこの不快感とは何がちがうのだろう?

この部分は改めて自分の中で考えておくべきだとは思う。

今の私の落とし所は
・主体者がその行為は残虐なものだという自覚があるか
・主体者がその行為に自信を持ってしまっているか
の2点において違いがあるという思っている。

私が今まで、そのような信念ゆえに多くの悪を為した場合、
感情的な自己への嫌悪感を持ちながらも
信念のために否応なく実行せざるを得ないがために行なっているか
という点が胸を打つ大きな原因であった

平たく言えば悩んでいるのである。

しかし、(あくまでも上巻での)土方は全く悩まずに、
自分の信念のもとに邪魔なものを排除している。
ここが私の中の不快感につながっているように感じている。

この点はもう少し考えてみるべき題材だとは思うが今日はこのへんにしておいて、
明日からの下巻の内容に心を踊らせながら眠るとする。