ドラッカー入門を読んでの読書メモ。
ドラッカー入門を読んでの読書メモ。
- 作者: 上田惇生
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2006/09/23
- メディア: 単行本
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ドラッカーはなぜここまでビジネスマンに愛されるのか、それは彼の言葉があらゆる言葉で「格好良いから」だとこの本を読んで感じさせられた。この本の筆者の上田氏は、生涯を通してドラッカーに関わっている人で訳文がまた格好良い。
ドラッカー関連の文章を読んで良く出てくる言葉に、「ドラッカーの読み方は読む人の数だけ存在する」という言葉がある。これは彼の著書が名言集の類になっているからだろう。どのページを開いても蘊蓄深い、それでいて難しくはない、だけれども格好良いそんな言葉が1つや2つ見つかる。しかも、それはビジネスマンが求めてやまないマネジメントというフィールドでの言葉である。ビジネスマンは自分の今の立場をメタ的に認知してドラッカーの言葉の中から自分が今必要と思っている言葉を抜き出す。だからこそ読み方が人それぞれになるのだろう。逆に言えばそれだけ多くのことをドラッカーは著書として残してくれている。
余談だけれども、これはクリスチャンの方の聖書としての構造と似ているように感じる。私の学校でのキリスト教概論によると、聖書の読み方は自分が読みたくなったときに自分が目のついたところだけを読むものらしい。決して小説のように最初から最後まで流れに沿って読むものではないのだという。聖書もドラッカーの著書も個別のストーリーは読み手側がそのときに最も自らに必要と思える部分だけ取り出す。その膨大な量のテキスト全体に根底として流れている教義は感覚的に理解しながら、利用するのは読者側が必要としている情報だけである。
というわけで、自分の中で気になった個所を書きなぐってみた。以下のような事にビビビッと反応するならドラッガー先生の著書を読み進めてみるといいと思う。
政府の役割の限界を指摘
政府は自ら実行者になるのは不得意、政府の役割は基盤やルールを作ることである。
経済定義の規定
国内経済を規定するのはグローバル経済であろう。
政府は企業におけるトップマネジメントの仕事をすべき
社会問題のニーズ
社会全体の問題はだれが扱うのか。
第二ミレニアムでは集権化をもとめた
第三ミレニアムには多元化を求めるだろう。
組織構造
組織の構造に決定版などない。とるべき組織の構造は仕事によってことなる。構造は戦略に従う。
既に起きた未来
未来を予測することはできない。未来を知る方法はすでに起こったことの既決を見ることである。子供の産まれた数が30万人減ったら少子高齢化社会が5年後には間違いないくおきるなど。これを既に起きた未来という。
コミュニケーションのコア
コミュニケーションは知覚である。そしてそれを成立させるものはコミュニケーションの発し手ではなく受け手である、受け取ってもらわなければコミュニケーションは起きない。
意志決定と見解
良い意志決定と満場一致は原理的に反する。見解からスタートせよとは彼が言ったのは、不完全な人間社会において相対的に機能する意志決定を求めているため。意見の不一致が存在しなければ意志決定を行うべきではないという原則。相反する意見の衝突、異なる視点の対話、異なる判断化の選択があってはじめて検討すべき選択肢が提示され、相対的に信頼できる決定を行う条件が整う。
ポストモダンの作法
・見る
全体を見る、そして聞く。
・わかった物を使う
なにが起こりそうかを考えて行動してはならない、既にわかったこと、すなわち起こったことを元に行動せよ。
既に起こった未来を使え
・基本と原則を使う
ただしそれらを全ての物に一律に適用すべき万能の原理としてではなく、補助線として使うことである。補助線とは世のため人のためという補助線。
・かけた物を探す
ギャップを探してニーズを見つける。
・自らを陳腐化させる
陳腐かはあらゆる物に起こる、故にみずからが陳腐化の主導権を握ること。
・仕掛けを作る。
目標をつくり、それに行動するという仕組みを作る。「なにを持って覚えられたいか」を考えることを日常化する事である。
・モダンを使え
具体的にいうとthink thorogh。モダンの考え方は今でも十分通用する。大切なのはそれに頼りきらないことだ。
マネジメントとは
マネジメントは手法であると誤解されている。それは社会の成立に関わる問題意識が横たわっている。それは社会的な存在としての人が、共通する目的に向かってともに働き、成果をあげ、自己実現するための物の考え方のことである。
cf.
彼は産業社会の主たる機関として企業とそのマネジメントの正否が社会の行方を左右するとの認識の元にマネジメントを集大成し、マネジメントの父とあおがれるようになった、マネジメントとは、産業社会は人を幸せにする社会足りうるかとの問題意識に発した堂々たる体系だった。金儲けのテクニックや、数式とデーターによるゲームまがいの物ではなく、その志は気高い物だった。
組織の責任
組織は社会から人という尊厳あるかけがえのない存在を預かる。それ故に利潤が目的ではなく、社会をよくすることが第一義である。
組織の権限の効用範囲
経営者がその権威を権限として行使できるのは、あくまでも社会の公益を基盤とするときだけである。
企業の存在意義
企業とは社会のための道具であり、社会のための組織である。
2つのニーズ
成果を上げる能力によってのみ、現代社会は2つのニーズ、すなわち個人からの貢献を得るという組織のニーズと自らの目的の達成のための道具として組織を使うという個人のニーズを同時に満たすことができる。
間違い
・マネジメントはきぎょうのため
・組織には唯一の正しい構造がある
・人のマネジメントも唯一の正解がある
・技術と産業は一体である
企業の所有権
企業は株主の物でも企業経営者の物でもない、社会のものである。また敵対的買収は企業で働いている人間を物として扱っているとして批判している
バランスト・スコアカード
マーケティング、イノベーション、生産性、人材、物的資源、資金、社会的責任、これらに目標をもつべきである。
これらのバランスを説いた物がバランスト・スコアカード。利益は目標ではなく明日さらに良い事業を行うための条件にすぎない。第一目標ではない。
顧客の求めている物
事業を定める上で何かがもっとも重要なことなのかが大切である。ドラッカーのコンサルタントの例、瓶を作っている→容器の製造では?事業はなにになるか、なにであるべきかを決める物は顧客である。
予期せぬ出来事のもたらすもの
事業の定義が有効でなくなったのを教えてくれる物は予期せぬ失敗と予期せぬ成功の2つである
顧客の創造
顧客を作ることをマーケティングとする。今の顧客よりも顧客になりそうでなっていないノンカスタマーの獲得がより重要になる。
企業の成功のための要素
- チェンジリーダー
- 既存の物の廃棄
- 日々の改善
- 成功の新展開
- 価値を創造するためのイノベーション
イノベーションについて
「イノベーションはイノベーションそのものが必要とされる以上にチェンジリーダー足らんとする姿勢を組織全体に浸透させるために必要である」
「イノベーションの機会は嵐ではなく、そよ風のように来て去る」
イノベーションの種
・予期せぬこと
・ギャップ
・ニーズ
・人口構造の変化
・意識の変化 →健康意識の例
・発明発見→一番難しく、一番打率が低い
リーダーシップについて
リーダーシップを獲得する上で、学ぶことのできない資質、習得することができず、もともと持っていなければならない素質がある。他から得ることができず、どうしても身につけていなければならない資質がある。それは才能ではなく、真摯さである。
リーダーシップも世のため、人のためのものである。リーダーシップとは人を引きつけることではない。先導者である。友達になって影響を与えることだけでもない。それは人気取りである。カリスマはいらない。自分のコピーだけは後がまに添えてはならない。強みより弱みに目をいく人もだめである。真摯さよりも頭の良さを重視する物もリーダーにしてはいけない。
なにを見てリーダーにすればいいか
・なにをしてきたか、なにが強みかを見る
・組織の状況を見る、組織がなされることは何か
・真摯さを見る
孤独であることはトップたる者の宿命
人事について
人事のうまい人が思っていること
「自分の子をその人の元で働かせたいと思うかどうか」
ドラッカーの人事論については
「PFドラッカー経営論集 収載
人事の秘訣、守るべき5つの手順」を参照すべし。
「人事の失敗は動かされた方ではなく動かした方の責任」
動かされたら何をもとめられたのかを考えることが毎回必要、昇進をもたらしたことをまたやっても無駄である。
成功させる人事のためには
1、仕事の中身をつめる
2、候補者を複数用意する
3、候補者の強みを見ること
4、候補者の上司や同僚など複数の意見をきくこと
5、指令の数ヶ月後、仕事の中身を理解しているかを核にすること
仕事を効率化させるための習慣化
・時間の使い方
・貢献に焦点を当てる
・強みの上に気づくこと、弱みを基盤としてはいけない
・集中すること。何に集中するのか決めること、一番重要なことを行わなければならない。2番目の事はしてはいけない。一番が終わっても2番を自動であげてはいけない、一番重要なことを再度考えるのである。
・成果を上げるよう意志決定を行う。
時間管理法
・時間を記録する、記憶ではなく記録する
・時間を管理する、不要な者を捨てる、しなくてもよいことはしない、部下に任せれることはまかせる。
・こうして自由になった時間をまとめる。
権限ではなく貢献
自分がいかなる権限をもっているかが問題ではなく、自らがいかなる貢献をないするかが問題である。会社で何をしているかと聞かれて、なんと答えるのか。普段から何を求められているかを考えていない限り、役職名を持って答えるという羽目になる。
大切なのは理屈ではなく、結果である
彼の言葉には「なぜかはわからないが」という言葉が良く出てくる。我々は今日を生きている。毎日何かを生み出している、学者がなぜかを明らかにしてくれるのを待っているわけにはいかない。それを待っていると手遅れになってしまう。
フィードバック分析
何か大きなまとまったことを行う際には、期待する成果をあらかじめ書きとどめておき、何ヶ月五課にそれを実際能勢かと見比べてみる。そうすると、成果の側面からみた自分の得意不得意な分野と方法がよくわかる。
強みの発見方法
自分の強みは人に聞くことが最も簡単で確実な方法である。伴侶、兄弟、親友に聞くこと。
強みと価値観
強みとする者と価値ありとする者とが違うとき、価値の方を優先させるべきである。価値観があわなければ楽しめない、楽しめなければ幸せになれない。貢献しているという実感がもてなければ意味がない。
shouldよりもwant
選択肢を前にした若者が答えるべき問題は正確には、何をしたらよいかではなく、自分を使って何をしたいかである。多元社会は一人一人の人間に対しじぶんはなにか、何をしたらよいか、自分を使って何をしたいかを問うことをもとめる。この問いは就職上の選択の問題にみえながら、実は自らの実存に関わる問題である。
強み、やり方、価値観
自らの強みは何か、自らの仕事のやり方はいかなる物か、自らにとって価値ある物は何か、の三つの問題にこたえが出せればいわゆる得るべきところも明らかになる。
自分の役割は変えてはならない
意志決定者とその補佐役のいずれとしての方が成果をだせるか、自らを大きく変えようとしてはならない。なぜかはわからないが、それはうまくいかない、それよりも自らの得意とするもの、仕事のやり方、価値ありとするものを伸ばすべきである。
全体とは
見て聞いて感じるという特設全体をとらえる能力が重要である。理屈は通っていても全体から見ると間違っていることが余りに多い。部分を足しあわせた者が全体とはならない。
その他
・企業には仕事のプロとしての倫理がある。「知りながら害をなすな」
・これからの企業と組織の最大の課題は経済的側面ではく、社会的な正当性の確立である。
・自己管理による目標管理
・トップマネジメント・チームを必要になる前に作っておく、肩書きも高給も不要。得意なことを担当する。
・仕事をする能力は習慣的な能力であって誰でも見につけれる。
・多くを求めるならば、何も達成しないものと同じ程度の努力で巨人にまで成長する
・不得意なことで一人前になるのはたいへんだが、得意なことで一流になるのは至って簡単である。
・二流を1流にするのは至難の業だが、一流を超一流にするのは容易である。
最後に
何を持って憶えられたいか。常にこれを意識せよ。そうすれば人生はうまくいく。
追記
少し前に「ドラッカーを学ぶための3冊」が話題になってましたが、個人的には、ドラッカーを学ぶにはいきなり有名どころのマネジメントとかよりはこちらを読み始めて、彼の思想的背景を学んでから読むのが良いのでは?と感じました。糸井さんもこちらで勧めてますが、入門にはこれを差し置いてないだろうという名著だと感じます。